契約内容に適合しないもの

契約内容に適合しないもの

Aさんが販売店から買った自動車に、次のような問題点が、引渡しを受けたあと発見にされた場合、

Aさんは自動車を販売店に引取ってもらい、代金の返還を受けられるでしょうか。

また、損害賠償を請求することができるでしょうか。

 4WDということで購入したのに、実際は2WDだったとき

 塗装が再塗装であったとき

 エンジンの調子が悪く、何度修理しても良くならないとき

 フロントガラスに傷がついているのが発見されたとき

 「運転支援機能〇〇付き」で購入したが、その機能が非搭載であったとき

 「運転支援機能〇〇付き」で購入したが、その機能が故障していたとき

 

設問①について

 自動車の駆動輪が4WDなのか2WDなのか、一般人は容易に確認することはできないでしょう。
 したがって4WDだと思った購入車が2WDだったということは契約内容の不適合にあたります。
 そして2WDの自動車はどのようにしても4WDの自動車にはなりませんから、Aさんは4WDの性能を持つその自動車を手に入れるという契約の目的を達成できないことになります。
 以上のことから、Aさんは売買契約を解除して自動車の引取りと代金の返還を販売店に請求できることができます。

設問②について

 Aさんが新車の時のままのものであると思った塗装が、その自動車の将来的な経済価値の大幅な下落が見込まれるような色替え等の再塗装であった場合には、契約内容の不適合にあたる可能性があるでしょう。
 しかし、再塗装されたものであったことによって、Aさんが「その自動車を購入した目的を達成することができなくなった」とするには疑問が残ります。
 再塗装を必要とした原因が何かにもよりますが、一般的にはプライスボード、コンディションノート等によって説明された品質、性能をその自動車が備えていれば、たとえ再塗装された自動車であってもAさんがその自動車を購入した目的は達せられたと見るのが相当だからです。
 そうだとすれば、Aさんは契約を解除することまではできず、代金減額請求や損害賠償のみができることになります(損害賠償請求には売り主の帰責事由が必要とされているので、代金減額請求を行うことが相当でしょう。
なお、代金減額請求を行うには事前に履行の追完を請求(契約不適合部分の修補請求)をする必要があるのが原則ですが(民法563条1項)、車両の経済的価値を毀損する再塗装といった本事例のようなケースでは修補することが不可能と思われますので、履行の追完を請求することなく代金の減額請求が可能です(民法563条2項1号)。)。
その場合の減額の範囲が争点となりえますが、再塗装車であることによってその自動車の通常の取引価格がAさんの実際の購入価格より安くなる場合には、その差額をAさんの損害とすることができるでしょう。

設問③について

 何度修理してもエンジンの調子が良くならない自動車は、もともと通常の運行に供することが不適当な自動車というべきですから、その自動車には本来有すべき品質、性能を欠いたものとして、契約内容に適合しないとみるべきです。
したがってAさんは、請求した履行の追完(修補請求)が実現しないものとして、契約を解除して、支払った代金の返還を請求することができます。

設問④について

 フロントガラスの傷は、特に専門知識がなくてもちょっと注意を払えば一般人でも発見が可能です。したがって、フロントガラスにそのような傷があることを前提に売買契約が成立したといえ、契約内容に適合していないといえません。
ですからAさんはそのことを理由に契約解除や損害賠償請求をすることはできません。

設問⑤について

 設問①と同様になります。

設問⑥について

 販売店が「運転支援機能〇〇付き」と表示して販売した場合は、その機能は作動することが前提となります。
よって、その機能が故障していたのであれば販売店の責任で修理をしてユーザーに引渡すことが必要です。
したがって、ユーザーは販売店に対して追完請求(無償修理の請求)が可能であり、販売店がユーザーの修理の請求に対応しないと、契約を解除される可能性がありますので、注意が必要です。